■『ダークナイト』 オススメ度10/10
こ、こ、これはすごい。最高。ダークヒーローものとして1つの頂点を極めてしまったのではないか。興行成績でタイタニックに迫ると聞いて「はぁ? なんでバットマンが?」ぐらいの印象だったが、観た後なら完全に納得がいく。
思わずありえねーと突っ込みたくなる超ハイテクとかぶっ飛んだ展開とか、いい意味でマンガチックな部分と、現代的な重苦しい問題設定とかヒロインが不細工とか、嫌になるぐらいリアリティのある部分の配分が絶妙。
クリスチャン・ベール(リベリオンは名作だっぜ)のバットマンもハマり役だと思うが、みんな言ってるようにヒース・レジャー*1のジョーカーの狂気が素晴らしい。やっぱり道化=トリックスター=秩序の破壊者というのはいいモチーフだなあ。悪役大好き人間としては今時珍しいこういう純粋な悪キャラは嬉しくてたまらない。
一応『バットマン・ビギンズ』が前作のようだが、まったく知らなくても分かりやすいようにきちんと考えられているので大丈夫。私も観ていないが何の問題もなかった。むしろ前作が微妙な出来だったら、こちらの完成度の高さを邪魔する可能性もあるので、まだ観ていない人がわざわざ観る必要はないと思う。
とりあえずバットマンというのはアメコミ原作で、犯罪都市ゴッサム・シティの市民を護るため、特殊な超能力ではなく資金力にモノをいわせたハイテク装備で犯罪者と戦うマスクヒーローであるということさえ知っていれば十分*2。ネタバレ防止のため、余計な情報は仕入れようとせずとにかく観た方がいい。
おまけ
道化と狂気と言えばこいつを外すわけにはいくまい。Youtubeでも大人気。
■『崖の上のポニョ』 オススメ度10/10
ぎゃああ! 事前の情報からは今度こそ盛大に外したかと思ったが予想外。何この圧倒的イマジネーションの洪水は!! もしかしてこれ傑作じゃね? ネット周りでの反応は思ったより良くないようなのが不思議。
今までの宮崎駿作品の中ではトトロに一番近い。子供向けと見せかけて子供好きの大人のノスタルジーをくすぐる感じ? 過去作品との相対評価で言えば、個人的に映画版ナウシカがあまり好きではない*1ので、それより上に置きたい。魔女宅とも迷うぐらい。ということは俺的宮崎駿監督長編アニメ映画作品ランキングとしてはこうなる。
- 天空の城ラピュタ
- となりのトトロ
- 魔女の宅急便
- 崖の上のポニョ
- 風の谷のナウシカ
- (ルパン三世 カリオストロの城)*2
- 紅の豚
- ハウルの動く城
- 千と千尋の神隠し
- もののけ姫
似てるだけでなく評価もかなりトトロに迫ってるな。納得いかないのは、どう考えてもディズニー作品から間違って迷い込んだとしか思えないママのデザインか。てゆーか世界の綻びは貴女でしょ、みたいな感じ。でもそれぐらいしかケチのつけようがない。公開中にもう一回ぐらい観に行きたい。
おまけ
■『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』 オススメ度8/10
押井守監督最新作 映画「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」公式サイト
友人に誘われて試写会行ってきた。事前の予想よりはずっとよかった。物語的には『紅のエヴァンゲリオン』あるいは『新世紀の豚』って感じで特にどうというところもないが、逆に欠点でもなく、その他のあらゆる要素がかなりレベル高くまとまっていた。押井守作品では一番好きかもしれない。(『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』はちょっと別格として)。
ただ、音がとても効果的に使われているので劇場で見ないといまいちかも。公式サイト等を見て一目でまるっきり肌に合わないという人以外にはおすすめしてよさそうだ。ちなみに原作は読んでいないが、ちょっと調べた限りでは原作に忠実と思っていいと思う。8月2日公開予定。
おまけ
■『ミスト』オススメ度9/10
これは予想外! 「さてちょっと“いかにもB級”って感じのおバカ映画でも観に行くか」と思ってたら裏切られました。スティーブン・キングのこの系統の映画化は、これまでひどいのばかりだったのですごく意外です。モダンホラー有数の傑作になったかもしれません。
宣伝と違って衝撃とかすごい謎とかいう類のものではないですが、ネタバレすると魅力がかなり薄れるのは確かだと思うので掲示板や読者レビューのサイトは見ない方がいいかも。一つだけ注意としてはホラーなのでそれなりにグロいシーンもあります。グロ耐性ない方以外には自信を持ってお薦め。
おまけ
モダンホラーと言えばゾンビ(ポップなドット絵とはいえかなりのグロ。注意!)。
■『クローバーフィールド/HAKAISHA』オススメ度7/10
あの日の恐怖も娯楽で消費「クローバーフィールド」 - 深町秋生の新人日記
この評を見て興味が沸いたので観に行った。賛否両論ありそうだが私は十分面白かった。期待するものを間違えさえしなければかなりの良作ではないかと思われる。トレイラーの印象とは裏腹にあまりネタバレを気にするような作品でもないので、まだの人も上の評を読んで観るか否か判断するといいと思う。
これから観に行く人は一点だけ注意。映画の字幕は冒頭に作品の面白さを損なうひどい誤訳がある。おまけの予告動画のものが正しい。
おまけ
■ヒトラー〜最期の12日間〜 オススメ度7/10
かなりよかった。ヒトラーの出てくる映画はもちろんこれまでも沢山あったが、ヒトラーはいまだに政治的にホットなので、どうしても配慮というか純粋に映画として楽しめない要素が入ってきてしまう。この作品ですら最初と最後にちょっとだけ入ってはくるが、今までになく徹底的にドイツ側の視点のみで描いている。それにしてもヒトラー役の人は本当にそっくり。日常生活に支障はないのだろうかと心配になってしまうほど。
おまけ
懐かしFlash。嘘字幕シリーズの源流かもしれない。
■『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 EVANGELION:1.0 YOU ARE (NOT) ALONE』オススメ度 8/10
この世代としては珍しいのかも知れないが、私はエヴァンゲリオンには全然特別な思い入れがない。流行っているのはもちろん知っていたが、本放送時はそもそも見ていなかった。以前書いたように基本的にマンガは読んでもアニメは全く観ない人間だった。その後も、いかにも「Wikipediaで仕入れてきました!」みたいな(もちろん当時Wikipediaはなかったのであくまで「みたいな」)浅薄な似非ユダヤ・キリスト教趣味と、むやみに謎とか言って引っ張る商魂たくましさ(ただしこれに関しては今考えるとひぐらしやデスノートと比べてそんなに悪質ってわけじゃないような)が何となく嫌だったのでなかなか観る気にならなかった。
YouTube時代に入ってから「やっぱりいろんなギャグの元ネタになってたりするし一応観ておくべきだよね」という消極的な信念の元でバックグラウンドで何となく流していたりしたので、今では一応テレビシリーズも映画も一通り観てはいる(はず)。
……という程度の背景知識の人間の感想としては普通に面白かった。どこが変わったとか言える程の知識はないが、技術的にいろいろとグレードアップしてるのはよくわかる。前半はダイジェスト風でちょっと退屈だったけど、後半はむかーしむかし『未来警察ウラシマン』で見たような覚えがある(あるんだけど歳が小さかったので自信がない。錯覚かも)八面体のレーザー使途(ラミエル?)の凄まじいパワーアップぶりに燃えーという感じ。
昔のエヴァを全く観たことがないという人(さすがに端折りすぎでついて行けないと思う)以外には文句なくおすすめです。
おまけ
ここを読みに来るような人には余計なお世話だと思うが一応。■TRANSFORMERS トランスフォーマー(オススメ度 4/10)
■レミーのおいしいレストラン(オススメ度6/10)
『Mr.インクレディブル』以来ピクサーにまいっている私だが、今回は正直期待はずれだったと言わざるを得ない。もちろん凡百のアニメとは比べものにならないレベルの高さではある。しかし、これまでどの作品にも見られたピクサーならでは、純ディズニーブランドならば絶対にあり得なかったと思わせるような予想を超えてくる要素がなかった。(ここから先内容の全面ネタバレあり注意)
CG他技術はいつも通り最高レベルだったと思うが、今回はピクサーを別格たらしめていた脚本がレベル低い(すくなくとも私は気に入らない)。ジョン・ラセターが自分を投影していると思われるレミーはよかったが、それ以外のキャラがどいつもこいつも首尾一貫していない。
グストーの霊はいい味だしてたがフェードアウトしちゃう(それは仕方ないが)し、女(名前が思い出せないが冒頭のショットガン婆さん以外には一人しかいないのでたぶん通じるだろう)キャラも最初の啖呵きるあたりまでは好感持てたが、後半はさっぱり。他の厨房スタッフは何のために出てきたって感じだし、ラスボスの評論家だけはなかなかいいキャラしてたのに、最後はなんだよお前は美味しんぼの京極さんかよと。
特にもう一人の主人公であるリングイニに全く魅力がないのが致命的。途中まで絵に描いたような貴種流離譚(きしゅりゅうりたん・実は高貴な身分である不遇な主人公が簒奪者の奸計を知恵と勇気で跳ね返して正当な地位を取り戻すというパターンのお話のこと)なのに、実は本当に才能ないとか、(どんな理由であれ)店潰して終わりとかありえないでしょ。こういう結末にするならリングイニはグストーと縁もゆかりもない見習いの方がまだよかったよ。
そう考えていくとレミーの結末もなんだか中途半端だ。ネズミだって人間だって料理への愛さえあれば違いはないんだよってメッセージならば、ラスボスの批評によってレミーの存在が世間に認められてよかったね! ……という結末にすることが簡単にできたはずだ。
逆にネズミはネズミだけどそれでいいんだよってメッセージならば、協力してラストバトルを乗り切った後、リングイニ(二人羽織やってる間に生来の才能を開花させていたということにして)は父の店を継いで、レミーはネズミの仲間たち(都会のエサは口にわねえよとぼやいていたことにして)に対して、それぞれの世界で一流シェフとして活躍しました。 ……とかいう終わり方でもよかったはず。
このどちらでも私はかなり気に入ったと思う。実際のストーリーはこのどちらも選べたのに(私が一瞬で思いつくのに脚本を何度も練り直すというピクサーのスタッフの選択肢の中に存在しなかったということはなかろう)、無意味に中途半端な折衷案を選んでしまったような気がしてならない。それとも私が何か読み取り損ねているのだろうか。海外での評価が気になるところだ。
おまけ
アニメーション繋がり。■300 スリーハンドレッド(オススメ度 9/10)
正直やられた。「これが楽しめる奴とは是非友達になりたいぜ!」感覚があの『スターシップトゥルーパーズ』にも匹敵する。ロードオブザリングの冥王サウロンの軍勢より人間離れしたペルシャの大軍に少数精鋭のスパルタンX(違う)が立ち向かう! ムキムキマッチョがぶつかり合い血飛沫が飛び散る!
いくらイランに対するプロパガンダの要素があるとはいってもここまであっけらかんとやられると正直腹も立たないわ。大まじめに抗議しなきゃならないイランの外務省職員はご苦労様である。
あえてそういう政治的なところにこだわる人にもおすすめしてみる。イラクがアレなことになってしまっている現在、ハリウッドがこんなふうにあからさまにコケにできる異文化はごく少ない。
すなわちそんな扱いをしても差別と糾弾される心配がないほど押しも押されもしない強大な異文化なんてもはや国名で言えば日中イランぐらいしかないわけで、このうち日本人としては日中は近すぎてなかなか客観的には見られない以上、この映画はすごく貴重なケースになる。
なんとなく『シン・シティ』を連想させるなあと思ったらどうやら同じ作者のコミックスの映画化だったらしい。知らなかった。女性に対してはよほどの筋肉フェチでもない限りおすすめしない。どっちかというと不愉快かもしれない。
おまけ
トレーラーっつーより戦闘シーンの一部かな。雰囲気をつかむのにいいかも。■話が通じない話『バベル』(オススメ度8/10)
タイトルのバベルとは聖書におけるバベルの塔(Wikipediaより引用)のこと。というわけだからテーマはディスコミュニケーションと格差。とにかく話が通じない。全ての登場人物と全ての登場人物の間で話が通じない話ばかり。
バベルの塔の記事は『旧約聖書』の『創世記』11章にあらわれる。位置的にはノアの物語のあとでアブラハムの物語の前に置かれている。そこで語られるのは以下のような物語である。
もともと人々は同じ1つの言葉を話していた。シンアルの野に集まった人々は、れんがとアスファルトを用いて天まで届く塔をつくってシェム(ヘブライ語、慣習で名と訳されている)を高くあげ、全地のおもてに散るのを免れようと考えた(偽典の『ヨベル書』によれば神はノアの息子たちに世界の各地を与え、そこに住むよう命じていた)。神はこの塔を見て、言葉が同じことが原因であると考え、人々に違う言葉を話させるようにした。このため、彼らは混乱し、世界各地へ散っていった(『創世記』の記述には「塔が崩された」などとはまったく書かれていないことに注意)。『創世記』の著者はバベルの塔の名前を、「混乱」を意味するバラルと関係付けて話を締めくくっている。
原初史といわれ、史実とは考えられないアブラハム以前の創世記の物語の中で、バベルの塔の物語は世界にさまざまな言語が存在する理由を説明するための物語であると考えられている。と、同時に人々が「石のかわりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを」用いたという記述から、古代における技術革新について触れながらも、人間の技術の限界について語る意味があると考えられる。
モロッコ・日本・アメリカ・メキシコの4地域を舞台に、モロッコ人一家、アメリカ人夫婦、夫婦の子供たちと子守のメキシコ人のおばちゃん、日本の聾唖の女子高生とその父親あたりの主要人物たちの数日間が淡々と描かれる。
全部が一丁のライフル銃で繋がってはいるわけだが、宣伝と違って別にこの銃を巡って思いも寄らない展開に進んでいくということはない。がっかりしたという人も多いみたいだが、本当は世界中が因果で1つに結びついているはずなのに現実はあまりにもバラバラだということを描きたい映画なのだから、これは宣伝の方法が間違っているんだろう。
ただし日本編は話題になったポケモン光線がかなり強烈な上、なんという思考回路この女子高生は間違いなく色情狂みたいなストーリーなので間違ってカップルや家族連れで見てしまった人は気まずいことこの上なかっただろう。全体としてはかなり面白かった。
おまけ
まあ世界の言語が多様なおかげでこんな空耳ソングを楽しめもするわけだ。感謝感謝。(下ネタ全開注意!!)■大友克洋は死罪でも生ぬるい。映画『蟲師』(オススメ度0/10)
主文、大友克洋は死罪。映画「蟲師」:オダギリジョー 蒼井優|忍之閻魔帳
を読んだときは「原作が原作だからいくらなんでもそこまで酷いわけないでしょ。あからさまな釣りタイトルでアクセス狙い必死すぎクスクス」とか内心思ってましたが今は120パーセントほど同意(貞子は言い得て妙だわ)。
正直「これはひどい」ってレベルじゃないぞ。私の知る限り空前のひどい漫画映画化(ただし『デビルマン』を観てないが)。どうやったら『蟲師』を原作に血まみれB級ホラー映画(全く文字通りの意味)を作れるんだ!?
原作から「柔らかい角」「筆の海」「雨がくる虹が立つ」「眇の魚」と比較的良い話を元ネタに選んでいるのに、各エピソードの最も大切な要素を削って最もあり得ない要素を付け加え、全てのキャラが最も言って欲しくないセリフを吐きまくる。
大友克洋は紛れもない天才だし結構好きだったけど、これの監督かと思うともう一生まともに見られないかもしれない。まあある意味これも天才の業には違いない。何か原作に恨みがあってわざとひどいものを作ろうとしたって普通の人間にはここまでひどいものは作れないぞたぶん。
ああ映写機のレンズが歪んでるのかと思うようなヘタクソな題字を見、『遊星からの物体X』を思い出させるような(今思えば結構的確な連想だったなこれ)ヘンテコなオープニング音楽を聞いた時点で席を立てばよかった。唯一の救いは新聞屋からもらったタダ券で観たので金銭的被害がゼロだったってことだ。
無理にでも良いところを探せば虹蛇の映像化が思ったより綺麗だったことか。しかし価値があったと思うのはそのシーンの10秒やそこらぐらいのみ。残りはできることならば私の記憶からもこの世からも抹消してしまいたい。
原作好きな人は絶対観ちゃだめ。まだ観てない人は悪いこと言わないから原作かアニメから入ることを強く勧める。不幸にも映画を先に観ちゃった人は何かの間違いだと思って忘れた方がいい。
もちろん私がアフタヌーン四季賞どころかファンロードにプロトタイプ『虫師』が載ってた頃からの古いファンなので原作至上主義に陥って(だから原作に忠実なアニメ版は好きだ)冷静に観れてない部分は絶対あるだろう。疑ってくれてもいい。でも観に行って後悔しても責任取れないよ。
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