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ガイア教の天使クジラ8 現代日本人は不当に宗教を軽視しすぎている

(今日の一コマ)

 近頃オーストラリア政府が捕鯨監視に軍隊を出すといって話題になっている。前々回強調したように、これは単なる選挙対策であり、私はことさらにそれを非難することはしない。

 だが、さすがにビックリするような話ではあり、日本のネット周りでの反発は「こいつら狂ってやがる」とかなんとか、それはそれは強烈である。

 多少冷静そうな人でも「クジラが相対的に見て可愛くて賢いことは認める。だけど所詮ちょっと大きい動物じゃないか。この強硬さはちょっと理解できない。」ぐらいのことは言う。気持ちはわかる。非常によくわかる。だが、ちょっと待ってもらいたい。

 あなたはおそらく、過去の数限りない宗教戦争を、愚かなことだとは思っても「狂っている」の一言で片づけたりはしないだろう。現在も世界中で起きている宗教紛争を、悲しいことだとは思っても必ずしも「狂っている」なんて言わないだろう。

 共産主義国が反革命運動の弾圧に軍隊を出すことを、よくないことだとは思っても、別に「狂っている」とは言わないだろう。民主主義や人道主義を守るために軍隊を出動させよという主張を特に「狂っている」と非難したりはしないだろう。

 それなのに、捕鯨反対派が捕鯨船を監視するために軍隊を出せと主張することだけを「狂っている」と言うのならば、それは私の考えでは、彼ら反捕鯨者に対する不当な差別であり、また危険なあなどりである。

 あなたは、コーランが破られたとか預言者ムハンマドを侮辱するような漫画や小説が載ったとかいう事態に際して、時には放火や殺人にまで発展するイスラム教徒の抗議に対して「ムハンマドが相対的に見て偉人であることは認める。だけどコーランなんてちょっと良い紙を使っている本に過ぎないじゃないか。この強硬さはちょっと理解できない。」なんて決して言わないだろう。*1

 これはイスラム教徒とその社会にとって、預言者やコーランがどういう意味合いを持っているか・どんな役割を果たしているかを、たまたま私たちが比較的よく知っているからである。

 政祭一致の強固なイスラム国家では、それらはただの人物と本ではなく、人間を社会と宇宙の中に位置づける全ての秩序の源であることを、すでにある程度まで理解しているからである。

 イスラム教徒――あるいは他のどの伝統宗教の信徒でも――を「理解できない」わけではないのに、反捕鯨運動を「理解できない」などと言うのならば、それは私たちの無知と偏見を意味するものでしかない。

 想像に難くないいくつかの理由によって、ガイア教は自身が宗教であることを認めたがらずむしろ隠すので、日本人がそれを理解できないことについては、かなり情状酌量の余地があるにしてもだ。

 宗教は安心を与え、不安と恐怖を解消してくれる。自分たち人間が宇宙の虚空に偶然生まれた、小さな泡のように孤独で・儚く・無意味な・くだらない存在ではないと言ってくれる。本当かどうかはともかく。

 宗教は血縁もなければ一面識もない大勢の人々が、同じ宗教を信じているというだけで団結することを可能にしてくれる。同時に同じ宗教を信じていないというだけで、都合の悪い集団に属する人々をどんなに非道に扱っても、躊躇したり後悔したり良心の呵責に苦しんだりする必要がないようにしてくれる。*2

 宗教は罪を赦してくれる。先住民を皆殺しにして奪った土地で、母なる地球をレイプ(笑)して産出した石油をどか食いして排気ガスをまき散らす車を乗り回し、地球温暖化を引き起こす牛を育てて血の滴るステーキを食っているという、普通なら到底許されそうにない罪を、綺麗なお船に乗ってのんびりとクジラを眺めながら、たぶん似たような肌の色をした仲間たちと一緒に鯨喰いのジャップ死ねと叫ぶことで帳消しにしてくれるのだ。(なんといううまい話だろう!ありがたすぎて涙が出そうだよ!)

 これでもまだあなたはオーストラリアのガイア教徒たちの真剣な訴えを「狂っている」などと言うつもりだろうか? これでもまだそう言えるというのならば、たぶんあなたは人間の弱点についてあまりにも無自覚でありすぎる。あなたがその無自覚を他の分野で他の誰かに向かっても叩き付けていないことを願うばかりである。

 私は彼らの主張を、狂っているどころか、ほんのわずかでもバカげているとも奇妙であるとも思わない。あなたはまだ知らないかもしれないが、彼ら信仰を持つガイア教徒にとってクジラはただの動物ではない。動物ですらない。

 自分たちが宇宙の万物を支配する階層秩序の中の素晴らしく高い地位――実際上の最高位――にいて、さらに無限の向上を約束されていることのしるしなのである。それを護るために軍隊を使うなと言うのなら、一体他の何に使えと言うつもりなのか?(つづく)

*1:皮肉や冗談としてわざとわからないフリをしているのでさえなければ。
*2:このことは過去においては、おそらく我々が近現代を基準に想像するよりも、ずっと大きな利点だったのではないかと思われる。このシリーズとはあまり関係ないが。

おまけ

 ラスト付近にビックリ(グロではない)注意。

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